9:30〜10:10 「アジアにおけるSPS研究の現状」

 中国におけるSPS研究の進展の噂が聞こえてくるものの、その全貌はいまだ明らかになっていない。本講演では中国のSPS研究の歴史と現状を報告すると共に、中国CASTが設計を行っている「Multi-Rotary joints SPS」の詳細について報告する。また韓国やシンガポール、インドにおけるSPS研究に関する現状と今後についても報告し、今後のアジア域におけるSPS研究の協力体制について提案する。合わせてワイヤレス給電に関するIEEE他国際学会の現状と、総務省とITUにおけるWPT regulationの議論の現状についても報告する。

10:10〜10:50 「主要太陽発電衛星の概念検討の比較と課題の見直し」

 我が国では1980年代から宇宙太陽発電に関する基礎研究が始まり、90年代にはNEDOによるグランドデザインや宇宙科学研究所を中心としたSPS2000などの研究が行われた。2000年代に入ると、USEF(現Jspacesystems)やNASDA(現JAXA)による商用太陽発電衛星の研究が実施されている。これら、我が国で実施された太陽発電衛星に関する概念検討を中心に比較を行い、近い将来における宇宙太陽発電実現ための主要技術課に関して述べる。

10:50〜11:30 「電子情報通信学会無線電力伝送研究会の学会活動について」

電子情報通信学会無線電力伝送研究会の学会活動について

「昼食休憩(1時間) 11:30?12:30」



12:30〜12:55 「マイクロ波ロケットに用いるフェーズドアレイ送電アンテナに関する考察」

 将来的な低コストの宇宙輸送システムとして、マイクロ波ロケットが研究されている。実現化の鍵は機体にミリ波を照射する地上システムの構築であり、地上設備の建設費を抑えるには高効率のビーム伝送技術が不可欠である。本研究ではその方法として、フェーズドアレイ送電アンテナによるミリ波集光を検討した。各アンテナエレメントの位相と出力を制御することで、ガウシアンビームを形成し、飛行高度に併せて焦点を変化させ、機体側の受電アンテナのサイズを小さくしたまま高効率な送電を行おうというものである。結果、広い高度領域にわたり高い伝送効率が得られ、フェーズドアレイを採用しない場合と比べると、地上システムに必要な大出力ミリ波発振器の数は1/6以下となった。

12:55〜13:20 「ファイバーレーザーを用いたローンチシステムの成立性検討」

 レーザー推進は、地上から宇宙空間への低コスト輸送技術に期待されている。近年100kWのファイバーレーザーが実用化され、1回に100g程度の非常にわずかなペイロードであるもののレーザーローンチが現実味を帯びつつある。本研究は、推進、大気中レーザービーム伝送、ビークル姿勢制御の主要素について、具体的な概念設計を行い、100kW級ローンチデモンストレーターの成立性を明らかにする。

13:20〜13:45 「レーザー推進機の安定飛行維持に向けた流体軌道連成解析」

 ペイロード打ち上げコストを低減すべくレーザー推進が提唱されているが,飛行時の姿勢安定が維持出来ずに照射ビーム軸から機体が逸脱してまい,連続的な推力獲得が困難となっている.本研究では,数値流体力学計算と 6 自由度運動方程式計算の連成解析を行い,横力発生時に生ずる角度方向オフセットが飛行不安定を誘起する事を示した.角度オフセットを最小化する”ビーム動的制御法”を提唱し,安定飛行の可否を議論する.

「休憩(10分) 13:45?13:55」



13:55〜14:20 「ビームパイロット信号と両側レトロディレクティブを用いた地上マイクロ波電力伝送システムの社会実装性向上」

 地上マイクロ波電力伝送システムが広く社会に受け入れられるためには、通信との干渉や人体への影響を最低限に抑えることが重要である。本報告では、信号の到来方向にビームを再放射するレトロディレクティブを送受電アンテナの両方に適用した両側レトロディレクティブシステムを新たに提案する。漏洩の少ないビーム状のパイロット信号を用いることにより、水平伝搬におけるマルチパスの問題に対応することが可能となる。また、送受電アンテナの両側でレトロディレクティブを繰り返すことにより、大気ゆらぎやアンテナ振動に追従しながら外部へのエネルギー漏洩を自己収束的に極小化することが出来る。提案手法をSSPSに適用する場合の利点と課題について述べる。

14:20〜14:45 「94GHzミリ波整流回路による高エネルギー密度無線給電」

 長距離の無線電力伝送では,大電力を取り出すために受電モジュールを大型化する必要がある.ミリ波帯を用いることで,ビームの直進性を高めて電力密度を上げることが可能となり、同じ電力を整流する際のレクテナを小さくすることができる。本研究ではより高い周波数で動作するレクテナ開発を目的に、Wバンド94GHzでの大電力の無線電力伝送を目指しレクテナの研究開発を行っている.高周波でのDCブロック挿入損失を考慮してシングルシリーズ型の整流回路を設計,製作し,フィンラインを用いて電力を回路に投入することで46%の整流効率を達成した.

14:45〜15:10 「28GHzジャイロトロンを用いた長距離無線電力伝送の検討」

 ミリ波での無線電力伝送は,ビーム指向性の高さや回路の小型化が可能といった観点から,高密度エネルギー送電方法としての魅力がある.本研究では核融合や分光光源などで用いられている大出力のミリ波源であるジャイロトロンに着目し,電力源として利用することで長距離級の送電実験を行った.使用したレクテナは単体での最大整流効率は46.8%,出力は102.4mWであり,25個のレクテナをアレイ化して用いる.送電実験は約1mの距離で減衰材を介して行い,減衰材での電力密度の低下を空間伝播による低下と見なすことで長距離級送電を模擬する.実験より,見込送電距離11mで出力1.04Wが得られた.

「休憩(10分) 15:10?15:20」



15:20〜15:45 「光無線伝送における太陽電池変換効率の入射レーザ波長依存性」

 L-SSPSにおける光電変換効率の向上を目的として,太陽電池に入射するレーザ波長依存性の検討を行った.バンドギャップエネルギーの異なるInGaP,GaAs,InGaAsP,InGaAsの4つの単セル太陽電池と,それぞれのバンドギャップに対応した異なる波長の半導体レーザを複数用意し,その変換効率を調べた.その結果,バンド端近傍の波長域では外部量子効率が変換効率を大きく支配し,バンド端よりも比較的波長の短い領域では入射フォトン数減少に伴う短絡電流低下により変換効率が低下した.いずれの太陽電池でもバンドギャップエネルギーよりも約100meV高いレーザ光を照射した時に最も変換効率が高くなることが分かった.

15:45〜16:10 「光レクテナセルを用いたレーザー光受電システム」

 光レクテナとは、現在マイクロ波領域の無線受電システムにおいて変換効率90%以上を達成しているレクテナを光領域に応用した光電変換システムである。光レクテナはアンテナのスケールを変えることで感度波長域を自在に設計することが可能なため、材料のバンドギャップ固有の感度波長域を持つ太陽電池に比べ様々な発振波長を持つレーザー光を高効率に変換できると期待される。本研究ではレーザー光線を用いた出力密度の高い遠距離無線送電システムにおいて、光レクテナを太陽電池に替わる受電システムとして用いることを提案し、その実現に向けて最重要課題である光応答ダイオード、アンテナについて検討した。

16:10〜16:35 「無線化スリップリング勉強会の活動と成果報告」

 NASAの太陽発電衛星規準システムでは、巨大な太陽電池パネルと送電アンテナを各々太陽と地球方向に指向させるが、その方向違いをロータリジョイント(RJ)とスリップリング(SR)で吸収することを提案している。日本ではSRを使わないよう、システムモデルがいくつか提案されてきた。しかし従来の接触式SRの実現は、必ずしも難しいものではない。ただ保守を考えると、接触式のSRでは摺動によるくずが出るので、改善が望まれる。そこで著者らは、この欠点を解決するため電力伝送部を無線化することを目標に、勉強会を開くこととした。ただし応用としては、SSPSに限らない。本件では、勉強会の構成と検討経過、成果について、概略を報告する。

16:35 「閉会挨拶 ( 第3回宇宙太陽発電シンポジウム実行委員長 陳 強(東北大学大学院) )」