シンポジウム開催案内

第17回宇宙太陽発電
システムシンポジウム

平成26年
10月21, 22日(火、水)
東洋大学白山キャンパス
(東京都文京区)

太陽発電衛星(SPS)とは?

宇宙の発電所

 太陽発電衛星(Solar Power Satellite, 略称SPS)とは、 将来の実用化を目指して研究開発が進められている新しい発電方式の一つです。 人工衛星の軌道上に広大な太陽電池を展開して、太陽光により電気エネルギーを発電します。 従来の人工衛星と異なるのは、軌道上で発電されたエネルギーを地上に送電し、 既存の電力網と同様に都市等へ供給する、市民のための発電所です。

太陽発電衛星の完成想像図 ©JAXA
(左:発送電部一体パネル型、右:太陽光反射鏡搭載型)

エネルギーを無線で伝送

 太陽発電衛星の最大の特徴は、宇宙で発電したエネルギーを、無線で地上に送電する点です。 従来の発電所では、発電した電気エネルギーは電線を通じて都市へ送電されています。 しかし、静止軌道と地上とは3万6千キロメートルと非常に遠距離であるため、 衛星で得られた電気エネルギーをマイクロ波に変換して地上に向けて放射し、 地上の受信装置で交流に変換して、既存の電力網に合流させます。 また、マイクロ波の代わりに赤外線のレーザーを利用する方法も検討されています。

エネルギー伝送の想像図 ©JAXA
(左:マイクロ波型、右:レーザー型)

安定した電力供給

 従来の地上での太陽光発電では、曇りや雨の日は発電量が低下し、夜には発電されません。 一方、太陽発電衛星では、太陽電池を宇宙に浮かべるので、太陽光が遮られることはほとんどありません。 また、マイクロ波は太陽光よりも大気を透過しやすい性質を持っているため、天候に影響されず、 安定して電力を供給できるという特長があります。

人々に安全な発電システム

 衛星から送電されるマイクロ波は、居住区域から充分離れた海上や平原のアンテナ郡に集中して照射され、 直流(その後交流)の電気に変換されます。 このとき、照射領域でのマイクロ波の電力密度は充分低く、 また、マイクロ波のビームはアンテナから外れないように自動制御されるため、 安全にエネルギーを送電することができます。
 また、レーザーで送電する場合は、その波長がマイクロ波よりも非常に短いため、 ビームを狭い領域に集中させることができ、 より小さい受電設備で電気エネルギーを得ることができるという利点があります。

様々な技術領域の融合

 太陽発電衛星は、構造、電磁波、高電圧、輸送など多岐に渡る分野の技術が 結集して初めて完成する複合システムです。現在、国内の様々な研究機関における各分野の専門家が、 要素技術の向上やシステム検討などについて研究を進めています。

開発された発電実験装置の例 ©JAXA
(上部:疑似太陽光源と発電・送電部、下部:受電部(レクテナ))


国の政策に含まれる宇宙太陽光発電の研究

宇宙基本計画

平成25年1月宇宙開発戦略本部決定
本文へのリンク(内閣府)

第3章 宇宙開発利用に関し政府が総合的かつ計画適に実施すべき施策
3−2.将来の宇宙開発利用の可能性を追求する3つのプログラム
G. 宇宙太陽光発電研究開発プログラム

(本文より抜粋)
(1) 現状
 我が国では、平成16年度からJAXA及び経済産業省が協力してマイクロ波 によるSSPSの研究を実施。平成21年度から両者が共同で進めている 地上での電力送電実証において、JAXAはマイクロ波のビーム方向制御技術の実証に、 経済産業省はマイクロ波の送受電技術の実証に取り組んできている。 JAXAは、レーザー伝送技術、大型構造物組立技術等の研究も進めている。
 これまでの成果としては、JAXAが実施したレーザーによる電力伝送実験、 経済産業省が宇宙での発電を想定して開発した薄型高効率送電用半導体が 挙げられる。
 JAXAは、SSPS実用化見通し判断に向け、レーザー及びマイクロ波による エネルギー伝送技術、大型構造物組立技術、集光技術等に関する試作/試験 並びに軌道上実証の検討を、経済産業省は、JAXAと共同でマイクロ波による 地上電力伝送実験を実施することを目標として開発を進めている。
 現在のところ、我が国の宇宙太陽光発電システムに関する技術レベルは、 世界トップクラスに位置している。海外では欧米がSSPSの要素技術の 実証に取り組んでいるが、宇宙での利用を想定した実験を実施しているのは、 我が国のみである。

(2)課題
 宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実現に向け、大きく分けて以下の3つ の課題を解決する必要がある。

  1. 技術(大型構造物を宇宙空間に輸送し、組み立て、運用・維持する技術、 高効率で安全な発電・送電・受電技術等)
  2. 安全性(健康、大気・電離層、航空機、電子機器等への影響)
  3. 経済性(特に地上から宇宙への輸送費低減が大きな課題。)

(3)5年間の開発利用計画
 宇宙太陽光発電システムについては、我が国のエネルギー需給見通しや 将来の新エネルギー開発の必要性に鑑み、無線による送受電技術等を中心に 研究を着実に進める。宇宙空間での実証に関しては、 その費用対効果も含めて実施に向けて検討する。

エネルギー基本計画

平成26年4月閣議決定
本文へのリンク(経済産業省 資源エネルギー庁)

第4章 戦略的な技術開発の推進
(エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に 推進するために重点的に研究開発するための施策を 講ずべきエネルギーに関する技術及び施策

2.取り組むべき技術課題

(本文より抜粋)
...、無線送受電技術により宇宙空間から地上に電力を供給する 宇宙太陽光発電システム(SSPS)の宇宙での実証に向けた 基盤技術の開発などの将来の革新的なエネルギーに関する 中長期的な技術開発については、これらのエネルギー供給源としての 位置付けや経済合理性等を総合的かつ不断に評価しつつ、 技術開発を含めて必要な取組を行う。

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 中期計画

平成25年4月1日~平成30年3月31日
本文へのリンク(JAXA)

T.国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
 2.将来の宇宙開発利用の可能性の追求
  (3)宇宙太陽光発電研究開発プログラム

 我が国のエネルギー需給見通しや将来の新エネルギー開発の必要性に鑑み、無線による送受電技術等を中心に研究を着実に進める。