10:05 〜 10:30 「最近のJ-spacesystemsにおけるSSPSへの取り組み」

一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)では、平成26年度(2014年度)より経済産業省(METI)から委託を受けて 「太陽光発電無線送受電高効率化の研究開発」事業を推進しており、これまでの研究開発の成果を活用しつつ、宇宙太陽光発電システムの実現に不可欠なマイクロ波無線送受電システムの更なる高効率化及びロードマップの作成等に取り組んでいる。ここでは我々が取り組んでいる研究開発の概要について紹介する。

10:30 〜 10:55 「SSPS研究開発シナリオ(初版)の紹介」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、SSPS事業化及び開発のシナリオを議論いただくため、SSPS事業性検討委員会、SSPSシステム検討委員会という、2つの外部諮問委員会を開催してきた。  このたび、両委員会での議論を通じて、SSPS中核技術を社会実装(踊り場成果)しながら、社会的なコンセンサスを積み重ね、研究開発を前へ進めるという考え方に基づく「SSPS研究開発シナリオ 初版」がとりまとめられたので、その内容を紹介する。

10:55 〜 11:20 「SSPSロードマップの検討で考慮すべき重要なポイント 〜テザー方式SSPSを例として〜 」

 本講演では、SSPSのコミュニティが、一般大衆やステークホルダーに「何時どのようなことが実現できるか」というビジョン(社会的な公約)を示すためのロードマップについて、テザー方式SSPSを例に、考慮すべき重要なポイントを示す。ポイントは以下の5点。(1) ゴールが明確で具体的である、(2) 未来技術に係わる長期の研究開発のため多くのターゲットが存在しうるが、できるだけ共通的な要素をもったターゲットを描く、 (3)ゴールそのもの及びそこに至る道筋に技術的な実現性が読み取れる、(4)ゴールは長くても30年以内、 (5)ロードマップは複数のフェーズに分けてGo/No Go判断ポイントを設ける。

11:20 〜 11:45 「宇宙太陽発電システムの検討現状と今後の検討方向」

 エネルギー環境問題を解決する新しい技術として、宇宙太陽発電システム(SSPS)が認められつつある。そこで、これまで提案されてきた各種SSSモデルについて、検討結果を精査した。それぞれの利点と今後進めるべき技術内容を明らかにした。  NASA規準システムの検討資料では、ロータリージョイント/スリップリングが最大難点と認識されていないことが分かった。ロータリージョイントは超大型アンテナの回転機構と似ており、実現可能である。また100万kW伝送するスリップリングは、金属接触面の最大電流密度から、幅5cm程度で済み、実現可能と思われる。従って、NASAシステムを排除する理由は無い。  SSPSは、30年を有する長期計画となる。そのためシーズ側としては、SSPS取得技術の外部応用を考えていくことが重要である。

11:45 〜 12:00 「学会のジャーナル発行について / 小紫公也 学会理事(論文誌担当)から説明」



12:00 〜 13:00 「休憩(昼食・1時間)」



13:00 〜 13:25 「大型発送電パネル制御用カーボンナノチューブアクチュエータの基本特性評価」

 現在宇宙太陽光発電衛星(SSPS)のモデルの一つとして、発送電一体パネル型が検討されている。これは一方の面にソーラーパネルを設置し、もう一方の面に送電用のアンテナアレーを搭載した多数のパネルを組み合わせたモデルである。SSPSは静止衛星軌道上で運用されるため、衛星本体と太陽の位置関係は周期 的に変化する。これに伴い衛星全体の熱変形も周期的に生じることとなる。マイクロ波による送電精度は衛星全体の平坦度に影響を受けるため、高効率な電力利用を実現するためには熱変形の制御は重要な課題となる。 本発表では、衛星全体の平坦度の保持のためのパネル間の角度制御を目的とした、カーボンナノチューブを用いた高分子アクチュエータに関する研究について紹介を行う。

13:25 〜 13:50 「5.8 GHz帯人工衛星内部ワイヤレスシステムの整流回路に関する研究」

 更なる宇宙開発のために、多くの科学実験衛星と観察衛星を打ち上げることは不可欠だと考えられる。一度多くの人工衛星を打ち上げるため、人工衛星内部ワイヤレスシステムが提案された。人工衛星内部基板間をワイヤレスにすることによって機体軽量化と各サブシステムのレイアウト自由度拡大が期待されている。 人工衛星サブシステム給電要求に応じて本研究は人工衛星内部ワイヤレスシステ ム用のCharge-Pump整流回路を中心として検討を行っている。しかし、従来のarge-Pump整流回路はシングルシャント整流回路により変換効率が低下するという欠点がある。本研究は一段Charge-Pump整流回路にF級負荷を導入し、その変換効率まで改善した。また、Charge-Pump整流回路とシングルシャント整流回路の変換効率を理論的に比較し、実験的に検証を行った。その結果、1段Charge-Pump整流回路が71%になった。

13:50 〜 14:15 「無線電力伝送のための不等間隔アレーアンテナによる放射制御」

 太陽発電衛星システムの無線電力伝送方式として,マイクロ波方式が提案されている.アレーアンテナを用いたマイクロ波方式の無線電力伝送は各アンテナ素子への励振振幅および位相を制御することにより,自由度の高い電磁波ビームを形成できるという特徴を有する.この方式では,受電アンテナ外の漏洩波を最小限まで抑える必要がある.  この要求に対して励振振幅分布にガウス分布を用いる方法が提案されている.しかし,本研究では,振幅レベルに応じて素子間隔を設計することで任意の電磁波ビームを再現する手法を提案した.これにより,励振振幅を制御した場合と同程度の漏洩波の抑制,および励振効率の向上を図る.

14:15 〜 14:40 「宇宙から地上への伝送を模した上下方向でのレーザー伝送実験の実施結果報告」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、本年3月〜6月にかけて、宇宙太陽光発電システム(SSPS)の研究の一環として、日立製作所 水戸事業所にあるエレベータ研究塔(G1 TOWER)をお借りして、上下方向(約210m)でレーザー伝送実験を実施した。  これまで実施してきた地上数mでは、大気の接地境界層内(地上→地上)での大気の乱れが過大であることから、より宇宙から地上への伝送を模した伝送実験が必要であった。本報告では、この実験結果について報告を行う。

14:40 〜 14:50 「休憩(10分)」



14:50 〜 15:15 「宇宙大型アレイアンテナとその応用」

 マイクロ波により無線電力伝送するタイプの宇宙太陽光発電システム(SSPS)は、巨大で軽量な板状構造のフェーズドアレイアンテナを必要とする。現在、このアレイアンテナに関する技術、及び、軽量大型開口の構造/組立に関する研究開発を行っているが、SSPS実現に至る途中の技術レベルにおいて、それら成果の応用先として、宇宙レーダ衛星が提案できる。本論文では、レーダ衛星の構造に関する技術を中心に、レーダ衛星のシステムや降水レーダ等への応用について、検討状況を報告する。

15:15 〜 15:40 「無線規制からみたマイクロ波送電の研究開発課題」

 宇宙太陽発電システムを実現するためにはマイクロ波無線電力伝送に必要な周波数を確保することが必須であるが、マイクロ波無線電力伝送に周波数が割り当てられるためにはマイクロ波無線電力伝送に対する需要を示すとともに、既存の無線システムに影響を与えないことを示す必要がある。  マイクロ波無線電力伝送に対する需要に関しては、ワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアムにおける検討活動が行われているほか、6月の国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)会合で承認されたReport ITU-R SM.2303において日本の活動の成果として紹介が行われている。  本稿では既存の無線システムとの影響検討として、電子レンジ、衛星通信、磁界共鳴・磁界誘導によるWPT(Wireless Power Transfer)との比較により、無線規則上からみたマイクロ波電力伝送の研究開発課題について考察する。

15:40 〜 16:05 「新型ロケット「H3ロケット」について」

 日本ではH-IIAに続く新型基幹ロケットとしてH3ロケットの開発が2014年から始まり、現在基本設計を完了し、詳細設計に移行した。H3ロケットは「我が国の宇宙活動の自律性を確保する」ことを基本とし、加えて、国際競争力のあるロケットとすることで世界の商業打上市場で一定のシェアを確保することを目指している。H3ロケットでは、政府の打上ニーズに確実に応えつつ激化する商業打上市場での競争に打ち勝つ為、「価格競争力」、「契約から打上までの期間短縮」、「衛星搭載環境の向上」を開発コンセプトとしている。本報告では、H3ロケットの概要について紹介する。

16:05 〜 16:30 「宇宙太陽発電実現のための軌道上実証構想」

1980年代以降、我が国では、太陽発電衛星の中核技術である無線送電技術を中心に多くの地上実証実験が行われ、また、90年代、2000年代において、太陽発電衛星システムの概念検討が実施されている。宇宙太陽発電の実現性を示すための、無線送電、軌道上インフラ構築、大規模発電等太陽発電衛星の主要技術に関する軌道上実証実験構想について述べる。

16:30 〜 16:55 「宇宙太陽発電学会Q&A作成と今後の議論に向けての提案」

 宇宙太陽発電学会の企画広報委員は、宇宙太陽発電に関する各種イベントを開催しながら、HPに載せるQ&A(案)の作成を行った。本発表では、その方法と結果について報告と提案を行う。宇宙太陽発電学会の前身である太陽発電衛星研究会のHP に掲載されていた SSPS に関する Q&A は「1 宇宙太陽発電とは」と「2 安全・生活への影響について」の 2つのパートに分かれており,それぞれ 11 問と 6 問の合計 17の質問から構成されていた。新Q&Aは、その項目を一般の人を対象とした講演会やサイエンスカフェなどから抽出して14項目を作成した。本Q&Aはあくまで(案)であり、今後、学会員や他学会・一般を交えて新たなQ&Aを作り上げていきたい。