会長挨拶

2014年10月に設立されました宇宙太陽発電学会の初代会長でおられた松本紘京大名誉教授(現宇宙太陽発電学会名誉会長・特別顧問)の後任として、2021年12月より宇宙太陽発電学会の2代会長となりました篠原真毅です。宇宙太陽発電学会は宇宙太陽発電システム(SSPS)の実現を目標とした世界唯一の学会として、SSPSのための学術研究や産官学連携を推進するため、長年にわたり活動を行ってきました。今後も先人たちの研究成果やSSPS実現に向けた多くの取り組みを学び、発展させ、将来につなげる活動を行ってまいります。

SSPSは宇宙空間で発電した電力を地上で利用しようという将来に期待される発電衛星/宇宙システムです。発電は太陽光発電を用い、宇宙から地上への送電にはマイクロ波やレーザーを用いたワイヤレス給電を用いたシステム設計がこれまで世界中で検討されてきました。そうすると昼夜天候に左右されない安定な二酸化炭素を放出しない発電所として用いることもできますし、ワイヤレス給電によって地球上の必要な場所に臨機応変に電力を自由に供給することもできます。SSPSはSDGs(Sustainable Development Goals)を実現する有望や技術と考えられます。またSSPSは非常に大きな発電衛星/システムであるため、将来地球重力圏を脱し、人が宇宙で暮らすようになる「宇宙開放系」へつなげ、持続的発展可能な生存圏を実現できる技術であるともいえます。逆にSSPSに必要な技術はIoTサンサー等への空間伝送型ワイヤレス給電や、宇宙往還機による宇宙観光や月面開発、大型展開構造物の他衛星への応用等、ここ数年のビジネスにも役立てることができます。SSPSは短期・中期・長期すべての将来のいずれにも役立つことができる技術であると確信します。

本学会では、宇宙発電所システム、発電、大型宇宙構造物、ワイヤレス給電、宇宙輸送、地上基盤設備、といった工学的テーマのみならず、SSPSの経済性や事業性、社会性といった社会科学の側面も含めた総合的な研究を取り上げています。我が国ではSSPS研究を1980年代より総合的に活発に行っており、現在は本学会がその研究活動の中心になっていると自負しています。2021年には我が国の宇宙開発の指針を示す「宇宙基本計画」にもSSPSは重点事項の一つとして取り上げられ、我が国では産学官一体となってSSPS研究を推進する機運が高まってまいりました。2021年現在、米中を中心とする宇宙開発競争の中で両国はSSPS研究を加速しており、我が国はこれまでのSSPS研究の優位性を保ち、他国と協調/競争してSSPS実現に向けさらに努力していく必要があります。その中心に本学会がありたいと思います。そして会員の皆様とともに,SSPSの実現を一歩でも近づけることに貢献できればと考えております。

宇宙太陽発電学会2代会長 篠原真毅