設立趣意書

世界人口の急激な増加とともに世界のエネルギー消費量も増大し続けており,地下資源の枯渇,温室効果ガスによる地球温暖化等の地球規模の 環 境問題が,より深刻になりつつあります。これまでの宇宙開発利用は,通信や気象や地球観測及び測地などを中心に行われて参りました。今後 も,人類が繁栄し続けていくためには,宇宙空間をより積極的に利用する宇宙開発を行っていく必要があります。地球環境に配慮しつつ,地球 上のエネルギー枯渇に対応していくためには,昼夜を問わず太陽エネルギーを享受することのできる宇宙空間に発電所を造り上げ,再生可能エ ネルギーとして地上に温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーを供給し続けることが必要です。とりわけ,エネルギー自給率の低い日 本が生き残っていくためには,このようなエネルギーシステム(宇宙太陽発電システム)は必須といえます。

宇宙太陽発電システムは,従来に ない大規模かつ,エネルギー効率の良い宇宙システムとして構築することが必要であり,太陽光・熱発電,無線電力伝送(マイクロ波、レーザー), 宇宙構造物,ロボット,宇宙輸送,地上インフラ,地球環境,電磁環境等々の広範な技術や安全性評価,経済分析等を要します。また,宇宙太 陽 発電システムの実用化は,広い分野の産業を巻き込み,経済への波及効果が大きく,経済再生の起爆剤ともなり得るものです。

エネルギー資源の乏しい日本は,宇宙太陽発電に係る多くの技術分野で世界をリードしてきております。これまで,宇 宙太陽発電システムの実現 を目指して,基 盤要素技術やシステム化に関する研究を進めている大学,企業,研究機関などが結集し,研究交流,情報交換などを「太陽発電衛星研究会」の活 動として行って参りました。宇宙太陽発電システムの実現に向けては,多くの課題を克服していく必要があり,理工学のみならず社会科学の側 面 も含めた総合的な研究,取り組みが必要です。これまで以上に体制を強化し,宇宙太陽発電システムの実現を加速させ,人類社会に貢献するため, この度,この研究会を発展的に解消して,「宇宙太陽発電学会」を設立することとなりました。本学会は,広範な人々を結集し,宇宙太陽発電 システムに関する基礎的研究及びその応用技術の進歩,実現の促進ならびに知識の普及を図り,もって学術文化の進歩普及,産業の発展及び生 活の 向上に寄与するとともに,世界の恒久的な発展と平和に貢献することを目的としています。